概況炎上件数は2014年を大きく上回る。SNSの拡大とスマホのカメラ性能向上が要因。
月間炎上件数はいずれの月も昨年を上回りました(表1)。今月は12月21日時点で81件を記録しており、SNSなどインターネット利用時間の長い連休は炎上件数が増えやすい傾向にあることを踏まえると、年末年始の連休が控えていることから、2015年12月の炎上件数は今年最大になることが予測されます。
いずれの月でも昨年を上回ったことにはいくつかの要因が考えられます。まずは、SNS利用者数の増加です。ICT総研の調査(表2)によると、日本における2015年のSNS利用者数は、2014年の6,023万人から、6,451万人を見込んでおり、今後もさらに増え続ける見通しです。また、SNSの種類も昨年より増加しており、炎上の発生元であるSNSの利用者の拡大が炎上件数を増加させる大きな要因となっています。
さらに、昨今ではスマートフォンの性能が向上したことでこれまでなかった炎上も発生しています。例えば、日常の風景を撮影してSNSに投稿した写真に個人情報などが写りこむケースです。これまでは画像が粗く読み取ることは不可能でしたが、スマートフォンのカメラ画像の性能が飛躍的に上がったことにより、拡大すると明確に読み取れてしまうケースが増えています。この場合、投稿した本人に自覚がなく、気づいた時には炎上しているといったことが増えています。
TOPIC炎上TOP5は「安保法案」「オリンピック」など重大ニュース関連が浮上
今年も様々な要因から炎上が発生していますが、ジャンル別に分類し特に多かった炎上は以下の5つでした。
<第1位>異物混入
今年最も多かったのは食品への異物混入に関する炎上でした。昨年末に炎上した「カップ麺昆虫混入問題」がマスメディアでも大々的に報道されて以降、TwitterやFacebook上で異物混入の告発が多数上がっています。画像と一緒に拡散されることからインパクトが強く、より炎上しやすい性質があります。一方で、虚偽の告発や、自宅で自然に混入したものであることが証明されて投稿者本人が炎上するケースも多く見られました。
<第2位>安保法案関連
今年を象徴するもので、多かったのは安保法案に関するSNS上の失言や過激なコメントを火種とした炎上でした。明らかに失言ととれるものから、「議論型炎上」という、思想が分かれることによって議論が白熱し大炎上に繋がるものまで多数発生しました。火種の投稿者は国会議員、タレント、大学教授、経営者など多岐にわたっています。
<第3位>オリンピック関連
5年後のオリンピックに備えて様々な施策が講じられている中、「税金の無駄遣い」「不透明性」の観点から炎上件数が多くなっています。発端はエンブレムの盗作疑惑で、この問題に対してTwitter等でコメントした著名人が炎上したり、政府に対しても批判が集中しました。
<第4位>情報漏洩
情報漏洩は常に炎上しやすいトピックですが、今年は「マイナンバー制度」の導入にあたって国民全体の個人情報の取扱いに対する視線がよりいっそう厳しいものとなっており、特にマイナンバーを提示する先の行政による情報漏洩事故は大炎上に繋がりました。2016年1月からマイナンバーの運用が始まるため、今後このジャンルでの炎上件数は増加が見込まれます。
<第5位>バイトテロ
アルバイト店員が悪ふざけをした様子を気軽にSNSに投稿して炎上、クレームや不買運動にまで発展させる「バイトテロ」は2013年に各地で頻発し、依然として断続的に発生しています。今年は某コンビニチェーン店の元アルバイト店員が顧客の顔写真や個人情報が記載された用紙を無断で撮影して投稿するなど、悪質なものも見られました。
展望2016年炎上予測
2015年に続き、SNS利用者数や新たなSNSが増えることが予想されることから、2016年はさらに炎上件数が増加することが予測されます。今年は「安保法案」「オリンピック」「マイナンバー」など、今年の重大ニュースに付随する炎上が多くあったように、来年もその時のニュースに関連する炎上が見込まれますが、同時に、「異物混入」「情報漏洩」「バイトテロ」などここ数年間、毎年一定数発生する問題も見過ごすことはできません。逆に考えればそのような予測可能な炎上については対策を打つことが可能であるため、各企業・団体が事前にどう動いたかが問われる一年になるでしょう。
監修清澤 秀彰(ソーシャルリスクアナリスト)
東京大学法学部卒業後、株式会社エルテスに入社。予防ソリューショングループで数多くの案件のリスク分析を行う。特に炎上案件の分析を得意とする。
炎上月次速報レポートについて
炎上月次速報レポートは、リスクに特化したビッグデータ分析を得意とする当社が、前月のネット炎上件数を独自に算出し発表するマンスリーレポートです。本レポートを毎月公開していく事で、企業や社会が抱えるデジタルリスクへの意識喚起を行ってまいります。
- ネット炎上
- ツイッターで50回以上のリツイートがされ、特定のまとめサイトにまとめられたものから、当社が“炎上”としたもの