エルテスが中期経営計画で発表したSaaS事業への取り組み。その第一歩となるプロジェクトが、SNSのリスク投稿を監視する「モニタリアン」だ。無料トライアルプランも発表し、飲食業界などを中心にじわじわとユーザーを増やしている同サービスの歩みや立ち位置、SaaS事業の展望などについて、プロジェクトを牽引する苅谷将宏に聞いた。
デジタルリスク対策の知見が詰まったAIが、SNS投稿を常時モニタリング
——エルテスが新たにローンチした『モニタリアン』。この新たなサービスの概要について教えてください。
苅谷 「モニタリアン」※1はTwitterをはじめとするSNSへの投稿を対象にした、AIによるモニタリングサービスです。これまでエルテスは1000社を超えるお客様に対し、ネット上のリスクを発見、対応するコンサルティングサービスを提供してきました。そこで培った分析や検知のノウハウを活用し、お客様自身によるSNSのリスクモニタリングを可能にしたものが「モニタリアン」になります。
サービスの流れを簡単に説明すると、まずお客様がモニタリングしたいキーワードを入力し、対象となる業界を設定していただきます。すると設定に応じ、さまざまな業界向けにカスタマイズされたAIが24時間365日、SNS上の投稿をモニタリング。「どのような投稿が行われていたか?」などの収集・判定結果をWeb上のポータルに表示するとともに、リスクのある投稿を検知した際にはにアラートメールでお知らせする仕組みになっています。
——SNS上の情報収集や分析を行うことができるソーシャルリスニングツールについては、ほかにも各種サービスが存在します。それらと比較して「モニタリアン」にはどのような強みがあるのでしょうか?
苅谷 リスクマネジメント機能に重点を置いているのが「モニタリアン」の特徴です。一般的なソーシャルリスニングツールは、SNS上で効果的に拡散したかどうかを分析することが主眼ですが、リスクの世界では例え一件でも危険な投稿は見逃せません。「モニタリアン」ではエルテスの持つ豊富なノウハウをもとに、そうした危険な因子を持つ投稿をAIに監視させているのです。
また加えて人間の心理として、起きるかどうかわからないリスクへの投資は前向きになれない、というものがあります。しかし、いざ起きてからでは手遅れになるのがリスクの世界です。私たちは初期費用を無料、もしくは低価格でご提供することで導入ハードルを下げ、使っていただくことでその必要性を実感していただく戦略を取っています。※2。
デジタルリスクと戦うための武器を、より多くの人々に提供していきたい
——エルテスにはもともと「Webリスクモニタリング」※3というネット監視のサービスがあります。そちらとの違いについてもお聞かせください。
苅谷 まず大きく違うのが、「Webリスクモニタリング」には専属のコンサルタントが付いて、二人三脚で企業のリスクに立ち向かうという点です。さらに、監視においてもAIだけではなく、専門の分析担当が目視でネット上の投稿を判定しています。リスク投稿の早期発見から専門コンサルタントによる緊急対策支援まで、一貫したWebリスク対策の体制構築が提供価値となっています。
その一方で「モニタリアン」は低コストで気軽にはじめられるSNSモニタリングを強みとしており、これまでエルテスが提供してきたお客様とはまた違った、中小事業者様向けに特化させたサービスとなっています。
▶Webリスクモニタリングのサービス詳細:https://eltes-solution.jp/service/riskmonitoring/
——なぜ、いま「モニタリアン」が必要だったのでしょう。エルテスがSaaS事業に乗り出した理由とあわせて教えてください。
苅谷 SNSの利用者は年々増加しており、それにともなってSNS上の誹謗中傷や風評被害などによる企業やブランドのレピュテーションリスクも深刻化しています。また、新型コロナウイルスの影響による外出自粛で、SNS利用者の平均利用時間も増加。リスクが顕在化する事例も多くなっています。
たとえば、製品やブランドに対する不満や嫌悪感など、これまでは内々の話で済んでいたものがSNS投稿という形で顕在化するようになりました。消費者や顧客が直接提供者に伝えない不満のことをサイレントクレームと呼びますが、その数は、企業が把握しているクレームの何倍にものぼるともいわれます。だからこそ、そうしたリスクを抽出して悪評の伝播を回避することや、リスクに対して先手を打ち、不満を解消するアクションを取ることがより重要になっているのです。
そして——。SNSリスク対策やSNSモニタリングが重要性を増しているのは、大手企業だけではありません。現代社会においては、飲食店などを経営する中小事業者様も、常にデジタルリスクにさらされているのが実情です。実際、弊社の「Webリスクモニタリング」が多くの企業様に認知していただけるようになったここ数年は、中小事業者様からご相談をいただく機会が増えていました。
そうした状況のなか、私たちが感じていたのは「デジタルリスクのリーディングカンパニーとして、そうした被害からより多くの企業様を守りたい」ということ。そうした思いから、低コストではじめられるSaaS型のサービスを開発・提供するに至りました。
——デジタルリスクのリーディングカンパニーとしてエルテスがより存在感を発揮し、企業としてもさらに成長していくために「モニタリアン」のようなSaaS事業が必要だったというわけですね。
苅谷 その通りです。エルテスはこれまで中小から大手までの企業様にサービスを提供してきましたが、「モニタリアン」はその料金形態(月額定額のサブスクリプションモデル)もあって導入のハードルが低いため、小規模な企業様や個人事業者様にも導入をご検討いただけています。
今後は、このサービスを通じて、「より多くの企業様をデジタルリスクの脅威から守る」という目的を達成するとともに、デジタルリスク業界の第一人者としてさらなる成長を目指していきたいですね。
「デジタルリスクといえばエルテス」という認知をさらに広げたい!
——「モニタリアン」は主にどのような業界で活用されていますか?
苅谷 もっとも活用が進んでいるのは飲食業界です。飲食業界は、自社の商品やサービスに対する意見がSNSに投稿されることが多く、そうした口コミや評判が多くのユーザーに参考にされています。だからこそ、そうした消費行動に影響を与えるSNS上の評判や口コミを把握し、先手を打って不満を解消することには大きな意味があるのです。また、飲食業界は一般的にとても忙しく、リソースも限られているため、SNSを随時チェックすることができなかったりもします。
たとえば、「モニタリアン」を導入いただいている黒糖カヌレ専門店の「ほうき星」様のケースでは、もともとご担当者様がSNSのチェックは行っておられました。とはいえ、日々の業務が忙しい中で、毎日チェックすることはできておらず、長期間サイレントクレームのような投稿を見逃す可能性があることに不安を感じておられました。そのため、多くのアルバイトスタッフが入れ替わる時期であり、新商品などへの投稿が増えるタイミングでもある春先に、SNSのチェックを自動化したいというご相談を受けました。
導入後は、SNS投稿の収集から内容の判定、毎日のレポーティングまでを「モニタリアン」が自動化。従来のSNSチェックに要する時間の短縮に加え、SNS上の口コミをスピーディに把握してスタッフと共有することで、サービスの品質向上に活用しているとフィードバックをいただいています。
サイレントクレームをはじめとした口コミや評判の把握、バイトテロや異物混入といった炎上リスクの早期検知だけでなく、「ほうき星」様のケースのように、ユーザーからの口コミをいち早く把握して商品やサービスの改善につなげていけるのも「モニタリアン」の強み。導入いただくことで、数多くのメリットを提供できると自負しています。
▶黒糖カヌレ専門店「ほうき星」様の導入事例はこちら
——「モニタリアン」およびエルテスのSaaS事業は今後、どのような方向性を目指していくのでしょうか?
苅谷 SaaS事業は、エルテスが企業としてさらに成長していくための重要な活動であり、コア事業に育てていきたい取り組みのひとつ。一方、SaaS事業の中核となる「モニタリアン」は、専任スタッフによる監視やコンサルティングを強みとしてきたエルテスが、「省人的なSaaS型のサービスでどのような価値が提供できるのか?」の検証であり、挑戦でもあります。そうした意味では、「モニタリアン」というプロジェクトで得られた知見を、デジタルリスク領域における新たな事業への展開などに生かしていくのが理想です。
加えて、「モニタリアン」を通じて、エルテスという会社をより多くの方に認知・理解頂きたいと考えています。エルテスがターゲットとしてきた大手企業様などの間では、「エルテス=デジタルリスクの第一人者」という認知をいただいていますが、世間的にはまだまだ。今後は事業者の規模に関わらず、より広い範囲の方々に「デジタルリスクといえばエルテス」という認知を広げていきたいのです。
——苅谷さんは入社2年目にして、「モニタリアン」などのプロジェクトを中心になって推進されています。最後に、日々の仕事のなかで感じているやりがいについてもお聞かせください。
苅谷 私がエルテスに入社した理由は2つあります。ひとつは、デジタルリスク業界に大きな可能性を感じていたこと。もうひとつは、新しい取り組みに挑戦させてもらえる風土があることです。実際、入社した年の10月から「モニタリアン」のプロジェクトに参画し、サービスの機能や仕様の設計、事業計画の立案まで、上司のサポートのもとで挑戦させていただくことができました。
そうしたなか、大企業の経営企画の方から飲食店のオーナー様まで、たくさんのお客様とお話しする機会もいただきましたが、そこで得た意見やアドバイスは日々の活動のヒントになるとともに、仕事のやりがいにもなっています。今後も、周囲の優秀な先輩たちについていけるように努力を続けつつ、お客様からいただいた貴重な声をエルテスのSaaS事業の進化に役立てていきたいと思います。
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※1 SNSモニタリングに加え、リスク検知に強みを発揮するエルテスのSNSモニタリングAI。キーワードを設定するだけでAIが24時間365日、SNS上の投稿をモニタリングし、結果をWebポータル上で報告。リスクを検知した際は数分以内にアラートメールで通知する。
※2 月額3万円のスタンダードプランに加え、最大3ヶ月まで完全無料で利用できる無料プラン(モニタリアンFree)も。初めてSNSリスク対策やSNSモニタリングに取り組む企業や中小事業者でも気軽に導入が可能。
※3 エルテスが2011年に提供を開始した、SNSやネット掲示板を監視し、炎上につながりうる投稿を早期発見するサービス。
プロフィール
苅谷 将宏(MASAHIRO KARIYA)
株式会社エルテス リスクコンサルティング本部 SaaS事業部 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。在籍中は、公共政策学および社会言語学を専攻し、行政分野へのICTの活用について学ぶ。2020年4月に新卒として、エルテスに入社。入社後は、営業を経験し、2020年10月からモニタリアンの立ち上げメンバーとして、企画からPR・マーケティング、インサイドセールスまで広く担当。