デジタルリスク対策サービスのデータ分析基盤を刷新。プラットフォームの刷新を推進するシステム開発部の野望とは?

2021年8月、エルテスはデジタルリスクに対応する各種サービスの基盤(プラットフォーム)の大幅な刷新を行った。サービスごとに構築していたデータ基板の統合に着手し、今後全サービスのUIやUXも統一される予定だ。ところで……。なぜこの段階でプラットフォームの刷新が必要だったのだろうか。そして、プラットフォームを刷新することでなにが変わるのか。エルテスの多種多様なサービスを影で支えるデータインテリジェンス本部 システム開発部の杉田大樹、寺中高昭に、その想いと狙いを聞いてみた。

システム開発部が手がける一大計画プラットフォームの刷新とは?

──まずは、エルテスのなかでシステム開発部が担う役割についてお聞かせください。

杉田 エルテスが提供している、デジタルリスクに対するさまざまなITソリューションの開発を一手に引き受けているのがシステム開発部です。わかりやすく説明するなら、「Webリスクモニタリング」「検索エンジン評判対策」「Internal Risk Intelligence」などのサービスをお客様に提供するのに必要な、データの収集・分析をおこなうためのプラットフォームをつくっている部署だとお考えください。

 

──システム開発部では、このたびデータ分析基盤を刷新・統合する計画に着手されたとか。なぜこのタイミングでプラットフォームを刷新・統合することになったのでしょうか?

杉田 エルテスではデジタルリスクに対応する複数のサービスを提供していますが、これまでは、別々の基盤で構築し、サービスを提供してきたため、お客様にご不便を感じさせかねない部分もありました。

たとえば、複数のサービスをご契約いただいているお客様の場合、サービスごとに異なるURLにアクセスをして、それぞれ異なるIDとパスワードを入力したうえでログインしていただく必要がありました。また、ログインした直後に表示されるダッシュボードもUIがバラバラで、サービスごとに異なる操作を覚えていただかなければなりませんでした。

そのため、「サービスの利便性向上」や「新たなデジタルリスクに対し迅速かつ適切にサービスを立ち上げること」がシステム開発部全体の課題となっており、その課題解決を目指して生まれたのが、プラットフォームの刷新というわけです。プロジェクトのいちばんの特徴は「各サービスをひとつの基盤上に集約すること」にあります。

新たなプラットフォーム(SRM-DB)のTOPページ

まず、プラットフォームの刷新では、顧客体験の向上を第一に改善を行いますが、その後サービス開発の基盤や請求業務などの弊社内の管理業務まで整備していきます。

エルテスがサービスを提供するデジタルリスクの領域は、非常に変化の早い領域です。リーディングカンパニーとして、今後も世の中のニーズに合わせて新たなサービスを提供していきたいと考えていますが、従来のシステムではエンジニアにかかる負担やシステムの老朽化にともなうメンテナンスコストの増加が大きな問題となっていました。つまり、市場の変化に対応した新サービスや機能開発を、スピーディに行えない状況でした。

そこで新たなプラットフォームでは、「新しいサービスをマイクロサービスとして同一の基盤上に追加し、クイックに市場に投入していくこと」や、「既存のサービスをあたかも1つのサービスのようにつなぎ合わせて、新しい価値を提供していくこと」などを目的に、基盤の集約とモダナイズを実施。それらを実現させることができました。

──お客様にとってもエルテスにとっても、非常に価値のある取り組みだといえそうです。現状、プラットフォームの刷新はどのくらい進行しているのでしょう。

杉田 フェーズ9まである段階のうち、フェーズ3を終えた状態です。検索エンジン評判対策とWebリスクモニタリングのダッシュボードを統合する基盤づくりがいったん終わったので、いまは基盤上に乗る各サービスを段階的に移行していっているところですね。

2021年9月から6ヵ月以内に「Internal Risk Intelligence」のダッシュボード及び本体機能の統合を進めます。お客様が触れるフロントの大部分は洗練されたインターフェイスによる各種表現が可能になったり快適な使い勝手になると考えています。

加えてお客様から見えにくい部分ではありますが、分析基盤や決済機能などの整備を行い、全社の生産性の向上を果たしてまいります。

システム開発部vsカスタマーサクセス!? プラットフォーム開発の舞台裏

──ここからは、フェーズ3までの開発の舞台裏についてお話を聞かせてください。かなり大きなプロジェクトなので、当然、経営陣や他部署のスタッフとも議論しながらの開発になったと思います。システム開発部としていちばんこだわったポイントはどこでしょうか?

杉田 “デジタルリスクと戦い続ける”サービスを提供するわれわれにとって、「情報にたどり着けるためのスピード」は最も重要な要素だと考えています。言い換えれば、お客様にクライシスが発生したときに、いかに迅速に情報をお伝えし、対策を講じられるかということですね。

その意味では、お客様がログインしたあとに必要な情報にたどり着くまでのステップをいかに減らすかという部分──。画面の表示数を減らして、必要な情報をしかるべき位置に出していくという点には非常にこだわりました。

寺中 私がもっともこだわったのは、やはりUI/UXの統一ですね。UXについては、先ほど杉田からもご説明したとおり、複数のサービスがそれぞれに異なる使用感でしたので、まずは顧客体験の統一を図るべきだと考えていました。

UIについては、統一感を出すことに加えて、一覧性の向上に取り組みました。旧ダッシュボードでは、お客様にクライシスが発生しているのかどうかが、一見しただけではよくわからず、画面を何度か遷移してようやく把握していただける仕様になっていたんです。

そこで、より視覚的に訴えるグラフをサービスごとのトップページに配置し、図を見ればお客様がいまどのような状態にあるのか、一目瞭然になるようなUIを目指しました。グラフのデザインについても一覧性を重視し、「シンプルなものほど伝わりやすい」という思想のもと設計を進めたつもりです。

半円グラフを用いたプラットフォーム画面

 

──半円のグラフなどもその一つというわけですね。そうやってシステム開発部ならではのこだわりをもってプロジェクトを進めるなかで、他部署と意見がぶつかることはありませんでしたか?

杉田 もちろんありました。エルテスでは、お客様にデータ分析結果をダッシュボードでご提供するだけでなく、担当コンサルタントによるより詳細な分析やリスク情報提供も行っています。つまり、コンサルタントも、お客様と同じデータをもとに分析を行うことになるので、ツールの使い勝手には一家言あるわけです。

そんなこともあって、コンサルタントをはじめとする他部署のスタッフやグループ会社の方々からは、ダッシュボードの仕様について、本当にたくさんの意見をいただきました。どれもありがたい意見ではありましたが、落としどころがなかなか見つからずに苦労したこともあります。

──そういう場合は、どうやって解決の糸口を見つけるのでしょう。

杉田 指標にしていたのは、やはり「お客様のためになるかどうか」という視点です。お互いのこだわりがぶつかったとしても、それを軸にディスカッションを重ねていくと、実は議論していた内容が担当コンサルタントのこだわりであり本質的にお客様のバリューにつながっていないこともあるわけです。お客様の求めるバリューは何か?目線をそこに合わせることでベストと思われる手段を決定しました。

寺中 逆に、私たちシステム開発部が、セオリー的に「こうしたほうがいい」と思っていた点が、実はそれほど重要ではなかったということもありました。そうやって、課題の一つひとつについて、落としどころを探りながら仕様を決めていったのですが、そのおかげで、メンバー間でのディスカッションの重要性をあらためて実感できましたね。

UI/UXの統一により、顧客のサービス滞在時間が40%近く増加

──フェーズ3が完了した段階で、“目指すもの”に近づいている実感はありますか?

杉田 お客様目線で言うと、UI/UXの向上については実感していただけていると感じます。それは数字にもあらわれていて、8月に新しいプラットフォームをリリースして以降、既存のお客様のページ滞在時間が30%~40%ほど増えました。また直帰率についても10%程度の改善が見られています。

そしてこれらの数字を見る限り、ひとまずお客様に画面ごとの情報をじっくり見ていただける状況をつくることができたのかなと、手応えを感じているところではあります。

翻ってエンジニアの立場で言えば、このプロジェクトは私たちにとって新たな開発手法への挑戦でもあります。これまで弊社では、セキュリティなどの要件定義に加えて、今回は寺中を中心としたチームが顧客体験を起点とした要素も要件定義の項目に追加しました。その上で、設計・開発・テストする一連のプロセスをアジャイルに進めリリースに至りました。

特定のペルソナを設定し、対象者の行動や心理を時系列的に可視化していく……。つまり、カスタマージャーニーマップを作成し、そのうえで開発を進める手法は、エルテスとして初めての取り組みなのですが、実際にお客様に提供する段階までクリアできたことで、チームメンバーの自信につながっているのではないでしょうか。

寺中 加えて、これまではシステム開発が、自発的にサービスの改善に乗り出すこともあまりありませんでした。しかし、今回システム開発部として顧客体験の向上や社の生産性向上の貢献につながる取り組みをしたことで、部全体の意識改革が進んだと感じています。そういう意味では、非常に良いプロジェクトになったのではないでしょうか。

今後は、人を介さないデジタルリスク対策サービスの提供も

──プラットフォームの刷新は、この先もフェーズ4、フェーズ5と続いていきます。システム開発部が、プロジェクト全体を通じて成し遂げたいことは何なのでしょうか。

杉田 ひとことで言うと、「新たなデジタルリスクサービスを立ち上げる機動力」と「啓発活動」です。デジタル化は待ったなしの中で、今後も新たなリスクが生まれてくると考えています。そのときに、スピーディにサービスを開発し、お客様に提供できる体制を作っていきたいと思います。また、それらの新たなリスクを営業チームに加えて、新たなプラットフォームを通じて、お客様に情報伝達し、使ってみたいと思って頂けるようにしたいと思っています。

エンジニアからなるチームもお客様のニーズを意識し、その目標に向けた開発をおこなっていく。それが次に目指す姿ですね。

寺中 そのためには、顧客体験のさらなる向上が必要です。たとえば、対象が既存のお客様であっても、エルテスのサービスに大きな価値を感じていただければ、「ほかのサービスも一度試してみよう」といったかたちで、私達のプロダクトに興味を持って頂けると思います。

──エルテスは、モニタリアンなどSaaSへも挑戦しています。最後に、その点についてのシステム開発部の思いあるいは野望をお聞かせください。

杉田 今までのエルテスの価値は、AIだけでない人の目を通した分析や発見をお客様にお伝えし、リスクを最小化・未然に防ぐことでした。それらに加えて、今後は「人を介さないデジタルリスク対策サービスの提供」にも取り組んでいきたいと思います。その一つが、モニタリアンです。機械学習を通じてAIの学習能力を強化し、あらゆるデジタルリスクの予測やその防止に対する示唆を、フルオートでお客様に提供する。人が介するサービスと、フルオートのサービスを提供しながら、いままで以上に多くの企業様のリスク対策を支援したい、それをシステム開発部が技術で実現するという野望を持っています。

いま手がけているプロジェクトは、これまでにない画期的なデジタルリスクプラットフォームをつくる試みであり、最終的なヴィジョンの実現に向けての大きなステップです。まずはフェーズ9まで続くプロジェクトをきっちりと進め、お客様はもちろん、社内のスタッフも含めて、新たなプラットフォームのファンをつくっていきたいですね。

単純な話、とても使いやすくて愛着を感じるサービスがあれば、「すごく良いサービスがあるから使ってみてよ」と率先して人に勧めたくなりますよね。そうやって人から人へと伝わる“良い循環”を生み出すツールを目指して、開発を進めていきたいと思います。

寺中 杉田の言葉につなげると、そこを目指すためにはまだまだUXが弱いと感じています。顧客体験を起点にした開発にも、ようやく取り組むことができたので、これからどんどん強化していきたい。それがシステム開発部としての当面の目標ですね。

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プロフィール

杉田 大樹(HIROKI SUGITA)

杉田 大樹(HIROKI SUGITA)

データインテリジェンス本部  システム開発部 サービス開発グループ マネジャー リサーチ会社でキャリアをスタートし市場調査および選挙予測の集計・分析及び、情報システム部の立ち上げを経験、SIerにてERP基盤やネットワーク・セキュリティの設計導入を経験、公益財団法人にて社会インフラのシステム企画・調達・運用に従事、社会貢献を果たした後、ロボット系スタートアップにてPdMとしてゼロからのビジネスシステムの立ち上げを実現。HR事業会社での新規事業PMを経たのち、エルテスにてデジタルリスクに関するITシステム開発や事業開発を担当。

寺中 高昭(TAKAAKI TERANAKA)

寺中 高昭(TAKAAKI TERANAKA)

データインテリジェンス本部 システム開発部 サービス開発グループ 福岡大学経済学部卒。デザイン会社・広告代理店などでデザイン業務だけでなく、プログラム業務も行う。現在はUIUX担当としていかに顧客満足度を上げるかを追求すべく、行動分析、解析、マーケティング視点などから捉えたサービス作りに取り組む。