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「内部不正ゼロ」の未来をつくる─新たなパーパスのもと、チームで育てるIRIの現在地

目次[非表示]

  1. 1.「内部不正ゼロ社会」の実現に向けて
  2. 2.IRIの存在意義を描き出すパーパス策定
  3. 3.目指すは「電気・水道・ガス・エルテス」


2016年にサービスの提供を開始し、今やデジタルリスク事業を支える主力サービスにまで成長したInternal Risk Intelligence。来年、サービス提供開始から10年という節目を迎える今、新たに事業パーパス「兆しを捉えるデータインテリジェンスで、内部不正から組織を守り成長を加速する」を策定しました。
そこで今回は、パーパス策定に至った経緯やパーパスに込めた想い、サービスの今後の成長軌道について、IRIの開発者でもあり、IRI事業本部長を務める川下巧さんにお話を伺いました。

今後の「エルテスの道」では、IRIのキーパーソンに焦点を当てた記事連載を企画しています。どうぞご期待ください。

「内部不正ゼロ社会」の実現に向けて

――まず、内部・外部のセキュリティの境界線が曖昧になりつつある市場環境の中、IRIに求められるポジションについてどう考えていますか?

川下 そこは以前から変わらず、サイバー攻撃の対策だけ、もしくは内部不正の対策だけをやっていればいいという切り分けは徐々に難しくなりつつある印象があります。例えば、外から侵入してきて内部のアカウントを乗っ取り、情報を持ち出そうとするようなサイバー攻撃もあり、そうした脅威をIRIで検知することで、シームレスなセキュリティ対策に貢献できると考えています。

また、社会的な犯罪の傾向として詐欺事件が増えつつあり、デジタルの領域にまでその影響が出てきています。この影響で、故意的な内部不正だけではなく、騙されたり脅迫されたりして不正に加担してしまったり、気づかないうちに内部不正行為をしてしまったり、情報持ち出し行為自体を不正だと知らなかったりと、不本意に巻き込まれてしまうようなケースも発生しています。こうした意図しない内部不正を防ぐことができるのが、IRIの大きな価値だと思っています。

――そうした社会課題を踏まえて、改めてIRIの目標を教えてください。

川下 検知を早期化し、ヒヤリハットからの学びを未然防止に役立てたいです。こうした価値提供を通じて、最終的には「内部不正がゼロの社会にしたい」というのが目標です。その社会を実現するために、内部不正の基本的な防御に加えて、もう一歩踏み込んだ対策として、我々のIRIを世の中に浸透させたいと考えています。

過去の「エルテスの道:我が子のようなIRIの成長と、新たなポジションへの大望」でお話しした課題感についても大きく変わっていません。エンタープライズ向けの品質・機能の向上と成長スピードを求められていて、そのバランスが難しく、解決に向けた進み具合もまだまだ成長段階です。

大きい企業や組織の場合は、それぞれの分野で研究開発するだけの専門部署がある一方、現状のエルテスでは研究開発への投資はまだ多くの余地を残しています。日々の業務に対応しつつ性能を向上させようとしていますが、今後は、そうしたミッションを持った部署を組成し、事業成長を加速させていく構想も温めています。

――性能向上と、そのスピード感とのバランス以外に課題としていることはありますか?

川下 会社としては、内部不正のインシデントが起きても、即時にエルテスと想起してもらえないという認知の課題があります。この課題については、事業戦略顧問に就任(※1)いただいたラック前代表取締役社長の西本さんのお力添えをいただきつつ、認知拡大にも取り組んでいきたいと考えています。

サービスの観点では、現状のIRIは端的に言えば検知することに特化したサービスであるのに対して、多くのお客様から検知した後の対応についてご相談をいただくことがあります。そのため、今後は検知後のコンサルティングや回復支援も視野に入れてサービスをアップデートしていきたいと考えています。

IRIの存在意義を描き出すパーパス策定

――ここからは、新たに策定したパーパスについてお伺いしていきたいと思います。なぜこのタイミングで、パーパスを策定しようと思ったのでしょうか?

川下 「事業を伸ばしていきたい」という想いがまずベースにありました。今組織を見渡した時に、いわゆる「組織の壁」に直面していて、人が増えれば増えるほど各々が違う方向を向いてしまい、作業をこなすだけの集合体になりつつあるという印象がありました。多様な人材が活躍しているからこそ、ルーツや考え方がそれぞれ異なるのは仕方のないことかもしれませんが、想いのベクトルは統一したいと考え、全員が持つべき共通の軸となるパーパスを策定しました。

また、以前から漠然と軸の必要性は考えていたのですが、どういう形で作ればいいのか悩んでいたタイミングで西本さんに参画いただき、パーパス策定の動きを加速できました。

西本さんからは「自分たちの良さや目指す方向を決めておかないと迷走するし、人に伝えることもできない。ただし、決めることで逆に足枷になる可能性もあるので、時代や環境に応じて変えていかなければいけない」というお言葉をいただいています。

事業や時代背景にあわせてパーパスを変えていく必要性は私も感じています。今後、自分たちの能力を活かして解決できる課題のスコープはもっと広げていけるかもしれない。その広がりに合わせてパーパス変更も含めた事業の拡大・転換も想定しています。

――今回のパーパスに込めた想いについても教えていただけますでしょうか?

川下 何よりも、「私たちの存在意義」を「分かりやすく」メッセージとして伝えることを意識しました。前半部分の「兆しを捉えるデータインテリジェンスで」は私たちが持つ強み、つまり、多様なデータを扱い分析することにより、取るべき対応を先読みできるインテリジェンス能力を示しています。「兆し」を捉えるためには、単にお客様からデータを預かり、標準的な分析を行うだけではなく、分析の軸や手法をお客様ごとにカスタマイズし、その企業特有の課題や成長フェーズに合わせた提案を行うことが不可欠です。

また、私たちが持つ分析ノウハウや、運営力なども合わせた情報能力を表す言葉として「データテクノロジー」ではなく「データインテリジェンス」というワードを選択しています。テクノロジーだけに頼るようでは、特に内部不正には立ち打ちできないと考えています。分析においても、AIだけではなくアナリストの活躍も必要不可欠です。そういった意味で、「データインテリジェンス」というワードの選択はサービスのコンセプトとも通ずるものがあると考えています。

ちなみに、AIとアナリストの共創は、SR(ソーシャルリスク)事業にも通ずるので、エルテスのコアコンピタンスだと思っています。

後半部分の「内部不正から組織を守り成長を加速する」は、言葉の通りの意味もありますが、前時代的なセキュリティではなく、次世代のセキュリティを提供したいという想いも込めています。ガチガチに守りを固めるのではなく、攻めと守りのバランスを整え、お客様がより安心して前に進める環境を作りたいという想いです。お客様のリスクを防ぐだけでなく、生産性を損なわずどうすれば成長を後押しできるか、そこにこそ、私たちの存在価値があると考えています。

――この「成長を加速する」というのは、IRIを導入いただいているお客様に対してということですか?

川下 一番はそうです。ただ裏側には、IRI事業に携わるチームメンバーの成長や、事業全体の成長という意味も込めています。パーパス策定は「チームメンバーの中心となるような軸をつくろう」という背景からスタートしているので、このパーパスを受けて社員一人ひとりが自立し、能動的に動く組織にしていきたいと考えています。「お客様の成長をどう加速させるか」という共通の軸を持ち、自ら考え、行動できる人が集まる組織こそが、IRI事業本部の目指す姿です。

――パーパスを社内に浸透させていくために、今後考えていることはありますか?

川下 究極的には「伝え続けること」に尽きると思っています。そして、その想いを行動目標や戦略・戦術とリンクさせていくことが重要です。社員が納得感を持てるベクトルを作ってあげることで、何か迷いがあったときに、「パーパスはこうだから、こうあるべきだよね」とフィードバックできる状態を目指していきたいです。

その一環として、パーパスの浸透を担うアンバサダーチームを立ち上げました。このチームでは、「なぜパーパスを設定したのか」といった背景の共有や、パーパスに紐づく行動目標をどう設定するかを一緒に考えています。私が一方的に発信するよりも、若いメンバー達が中心となって当事者意識を持って動く方が、同じ立場のメンバーにもより響くものがあると考え、動き出しました。社員が感じているであろう課題感や疑問を、代表者であるアンバサダーチームのメンバー達と膝を突き合わせながら一緒に解決していきたい、そして、社員一人ひとりの「気づき」や「想い」を起点に、パーパスの浸透を広げていけたらと思っています。

目指すは「電気・水道・ガス・エルテス」

――今後の展望をお伺いしたいと思います。今回パーパスを策定したことで、何か変わったこと、変えていくことはありますか?

川下 パーパスを策定したことで、今後は自分たちの「コアコンピタンス」、つまり、強みや能力の核を意識した戦略を立てていきたいと考えています。パーパスを軸に「本当に自分たちの価値を発揮できるか」を判断基準にしていきたいと考え、今まさに、その軸に基づいた戦略づくりを進めているところです。具体的には、今の私たちが強みとする検知能力を活かし、更にサービスの対応範囲を拡げていきたいと考えています。

また、現在導入いただいている企業はエンタープライズが中心ですが、今後は、エンタープライズ企業のサプライチェーンを構成する企業もカバーしていきたいです。大手の製造業は一社ですべてを完結しているわけではなく、複数の企業で構成されたサプライチェーンで成り立っています。仕入先の一社がランサムウェア攻撃などを受けてしまうと、連鎖的に生産が止まり、全体の供給に影響を及ぼすケースも実際に起きています。個々の企業の問題に見えても、サプライチェーン全体のリスクにつながる…そこにも、私たちIRIの存在意義があると考えています。

とはいえ、簡単な話ではないので、サプライチェーンに関わる企業が実際にどこまで対策を講じられるのかを理解したうえで、私たち自身の能力をどうブラッシュアップし、どのように提供していくかを慎重に検討する必要があります。現状では、大手企業向けにカスタマイズされた対応が多い状況なので、今後は自動化や効率化を進め、企業のサプライチェーンを支えられるような、より幅広い体制を整えていきたいと考えています。

――顧客や投資家の方々に向けて、今後のIRIに期待してほしいことはありますか?

川下 まず「内部不正が起きたらエルテス」と自然に想起していただける存在になりたいです。そして最終的には、会社のミッションである「安全なデジタル社会」の実現を目指しています。

例えば生成AIのような新しい技術も、「リスクがあるから使わない」ではなく、「安全に使える仕組みがあるから明日から使える」と言える社会。そうなれば、個人も企業もスピード感を持って成長できるはずです。私たちは、その成長を支えるインフラの一つ「電気・水道・ガス・エルテス」のような存在になりたいと考えています。

――最後に、この記事を通して社員へ伝えたいことはありますか?

川下 このパーパスそのものが、社員のみんなに伝えたいメッセージの答えだと思っています。私たちは、日本を代表する内部不正対策の会社になれると本気で考えています。そのためには、一人ひとりが力を発揮し、内部不正のプロとして相談されるような存在を目指してほしいと思っています。

実は、このパーパスをつくる際に、セキュリティ業界で有名なラック社を参考にさせていただきました。ラック社は、エンジニア一人ひとりが世の中の事例を自主的に研究し、それを基にサービス改善の提案を積極的に発信しているそうです。私たちも、理想は社員一人ひとりが自ら考え、サービスの改善や新しい挑戦のアイデアが現場から次々に出てくる、そんな風に主体的に学び、考え、動く組織を目指していきたいです。

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※1 2025年6月18日付リリース「株式会社ラック前代表取締役社長西本逸郎氏の事業戦略顧問就任に関するお知らせ」はこちら

プロフィール

川下 巧(Takumi Kawashita)
執行役員 IRI事業本部 本部長


経済産業省認定資格 情報セキュリティスペシャリスト保有(現情報処理安全確保支援士)。新卒にてエルテスに入社し、IRIの立ち上げメンバーに選抜。多数の企業に対して、内部不正のリスクマネジメント支援を行い、IRI事業の責任者を務める。

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エルテスグループで働く仲間は何を考え、何にやりがいを感じているのか――。 従業員個人にフォーカスを当て、これまでの経験や働き方、大切にしている価値観などをインタビューする連載企画です。エルテスで働く「人」を通して、エルテスグループの魅力への理解をより深めていただけたら…。 第二弾は、株式会社エルテスで執行役員を務める川下巧さんです。

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