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メジャー思考で市場を拓く――IRIが挑むプロモーション戦略

目次[非表示]

  1. 1.エルテスの印象は「骨のある会社」
  2. 2.お客様の認知と市場の熱を高めるプロモーション施策
  3. 3.成長の鍵は生成AIとの共存と、メジャー思考


2016年にサービスの提供を開始し、今やデジタルセキュリティを支える主力サービスにまで成長したInternal Risk Intelligence(内部脅威検知サービス、以下「IRI」)。今年、サービス提供開始から10年という節目を迎えるタイミングで、新たに事業パーパス「兆しを捉えるデータインテリジェンスで、内部不正から組織を守り成長を加速する」を策定しました。
IRIのキーパーソンに焦点を当てた連載企画第3弾となる今回は、2025年11月よりエルテスのマーケティング戦略を担う、事業戦略本部長の奥天陽司さんにお話を伺いました。

エルテスの印象は「骨のある会社」

――エルテスに参画を決めた理由について、これまでの経歴とあわせて教えてください。

奥天 もともとは、日本マイクロソフト株式会社でシステムエンジニアとしてWindowsなどのソフトウェアのバグ修正を担当していました。当時担当していたWebサーバー製品へのサイバー攻撃の調査以降、セキュリティ対策に取り組むことになりました。製品の脆弱性に向けてセキュリティ更新プログラムを提供するわけですが、提供しただけでは対策は進まず、実際に適用されなければ脆弱性を狙った攻撃を防ぐことが難しいわけです。セキュリティ更新プログラムをどのように適用していただくかを考えたとき、サイバーセキュリティには顧客の理解と、理解に伴った行動が必要不可欠だと身をもって感じました。この経験から、セキュリティの重要性の認知向上に必要なことを考えた上で、その後マーケティングの仕事に移りました。それから足掛け20年以上、マイクロソフト社とラック社でセキュリティ領域のマーケティングに取り組んできました。昨今では、セキュリティ対策を行うことが常識となり、私の役割は一区切りと感じていたタイミングで、ラックの恩師である西本さんから内部不正対策について説明を受けました。

サイバー攻撃は、攻撃者と被害者という2軸で語られることが多いですが、組織内の不正や過失による脅威は、仲間による不正や悪意のない過失により発生するもので、技術的な対策が難しい分野です。しかし、そんな内部不正に対して、エルテスが技術的対策に挑戦していると聞きました。世の中が目を背けるテーマである内部不正対策も、技術的な対策でリスクを抑えることで、組織も社員も守れることをまずは知っていただき、行動に移してもらうためには、マーケティング活動の強化が必要だと感じ一緒に取り組むことを決意しました。

――エルテスに参画する前、外から見た時と、中から見た現在のエルテスの印象にギャップはありますか?

奥天 入社前は、「企業が膨大に蓄積しているログデータから社員の行動を分析し、好ましくない振る舞いを発見する」という原理は理解できたのですが、膨大な種類のデータに精通しなければならず、技術的にも非常に難しいので、この規模感のエルテスで本当に実現できているのか懐疑的でした。しかし、製造業など知的財産管理に問題意識のある企業を中心に導入が進んでいることを知り、骨のある会社だと感心しました。IRIが実は2016年からサービスを提供していて、10年もの歴史を持ち、需要がある層には確実に評価されている点も印象的でした。

入社から3か月が経過した現在は、とにかくお客様の課題に真正面から向き合っている点を評価しています。お客様からいただく困難な要望にも柔軟に対応し、その経験をサービスにフィードバックしているからこそ、1万件以上の不正行動パターンという膨大な検知ロジックの蓄積に繋がっているのだと思います。IRIには、日本ならではの就業環境の理解や、不正と捉える条件の網羅性、国内だけで利用されているITリソースの把握など、エルテスならではのノウハウが詰まっていると思います。

――第三者目線で評価していただき、ありがたいです。一方で、エルテスが解消しなければならない課題については、どのように考えていますか?

奥天 エルテスでマーケティング業務を始めるにあたり、プロモーションチームに状況を聞いたところ、マーケティングコミュニケーションもリードジェネレーションも、少ない人数でしっかり運営されていました。デジタルマーケティングの仕組みも実装されていますし、SEOなども手堅く取り組んでいます。新規顧客開拓のためのリードジェンにも取り組んでいますし、営業と連携したフォロー体制も組まれています。

しかしその一方で、内部不正対策に対するパーセプションチェンジ(思い込みや誤解の払拭)や、需要喚起にまだまだ余地があると感じました。今はまだ内部不正事案で大変な思いをされている方にしかエルテスのサービスの価値が伝わっていないので、今後はバリュープロポジションの明確化など、ターゲットに認知していただくための活動を進めていきたいと思っています。
そのために今進めていることは、内部不正に対してエルテスが提供できるサービスラインナップの整理と、それを広く知っていただくための取り組みを、メディアミックスの手法を使って広げようとしています。

――施策の優先順位を決める際に、重視している判断基準はあるのでしょうか?

奥天 実施効果が高いと見込まれるもの、そして営業の支援になるものを重視しています。お客様の内部不正対策への関心を引き寄せ、理解の加速を促し、行動変容につなげるために、効果的なものから取り組むと同時に、平時から行っているリードジェネレーションの反響を見て取り組みの優先度を見直す、といったことを四半期ごとに繰り返したいと思っています。
IRI事業本部長の川下さんからは、マーケティング部としてのプロモーションからのリードジェンはもちろん、企画の支援までをカバーし、事業部においてもマーケティングマネージャを育てていくということで合意いただいています。

お客様の認知と市場の熱を高めるプロモーション施策

――ここからは、具体的なプロモーション施策についてお伺いしていきたいと思います。1月に開設したオウンドメディア「eltes insight」、4月に実施した記者発表会と、このタイミングで新施策を立て続けに打ち出す狙いは何なのでしょうか?

奥天 以前のBtoBマーケティングにおいては、展示会やDMなどで課題対策について提案をするダイレクトアプローチが行われてきました。お客様もまた、課題の整理や対策法を知るために、企業同様にエネルギーを使ってくれていました。しかし現在は、課題が顕在化したお客様はAIを使い、容易に情報収集や分析が行えます。また、課題が明確ではない潜在層の方に気付きを提供することも重要です。つまり、我々が営業活動をする前から、お客様に前提知識を持っていただくために、エアカバー(地上作戦前の制空権確保を行う軍事作戦)を行い、市場の認知や熱を上げる必要があります。

今回の情報発信強化としての新オウンドメディア「eltes insight」の開設と、記者を招いての事業の発表会は、複数の経路でお客様の理解とマインドシェアを高める活動の一環として実施しました。

「eltes insight」は、私がこれまで取り組んできた外部脅威対策(サイバーセキュリティ対策)での経験から提案したアイデアです。企業の「闇」の部分にあたる内部不正に関する情報はなかなか外部に出てこないので、世の中の集合知になりにくい性格を有しています。IPAや他の組織がガイドラインとして発信した情報だけでは、危機感などは伝わりにくいものです。そこで、長年内部不正対策に取り組むエルテスだからこそ伝えられる危機感を文章化して「注意喚起情報」として共有することが一番の目的です。
また、もう一つの目的は、エルテスのアナリストやカスタマーサクセス、営業で活躍する現場メンバーの名前を表に出し、セルフブランディングを進めることです。エルテスのノウハウをまとめ、市場に訴えかける、それを読んだ方にエルテスの知見と社員を意識してもらうことは、社員のキャリアにも良い影響があると考えています。

また、記者発表会は、まず記者の皆様に内部不正へ意識を向けてもらうことと、デジタル技術を活用した対策方法があることを知ってもらうことが目的です。毎日のように内部不正問題が報道されてはいますが、デジタル化による社員行動把握の必要性など、対策にまで踏み込まれることは稀です。ジャーナリズムの力で、内部不正の核の部分が記事化されることで、エルテスのバリュープロポジションが明確になればいいと考え、開催に至りました。こうした発表会や勉強会は、今後も継続して開催していきたいと考えています。

――いずれも初めての試みでしたが、一番のボトルネックは何だったのでしょうか?

奥天 コンテンツの排出や商材企画などの活動は中期的なマーケティング施策であり、リソース面での負担が大きくなります。一方で、短期的な成果を求められる営業の立場からすると、より直接的な販売促進につながる活動が期待される場面も多く、役割ごとの時間軸やニーズの違いから、部門間の分断が生じてしまうことを一番のボトルネックとして懸念していました。しかし、実際に活動を始めてみると、事業・マーケティング・営業の垣根は低く、それぞれが短期と中期目標を共有し、尊重し合えていることがわかりました。
現在は、活動を0から1に進めている状況ですが、これを100まで進めるには引き続き多大なリソースが必要になります。継続的な活動につなげていくためには、社内のさらなる理解と協力が不可欠であり、そこが今後の課題だと認識しています。

成長の鍵は生成AIとの共存と、メジャー思考

――長年プロモーション領域に携わる奥天さんから見て、今の時代に求められる企業のコミュニケーションはどう変化していると考えますか?

奥天 先ほどお話したように、生成AIの登場でお客様の情報収集や初期の意思決定が大きく変わりつつあります。営業が動く前に、お客様の中で既にある程度結論が出ている、というのがこれからの流れです。生成AIへの最適化はもちろんですが、価値のあるコンテンツ発信を通じて、エルテスが内部不正に関する知見を豊富に有していることをお客様にダイレクトにお届けするとともに、AIにもそれらの知見を学習してもらい、エルテスの価値を世間的に認めていただく必要があります。
そして、お客様の認知・理解・検討という、それぞれのフェーズに合わせたコンテンツの制作や、それらを的確に提供できる場(リードジェン)への参加など、常にお客様の課題解決につながる経路を確保することも大切だと考えています。

また、この流れは、既存の商業メディアで活動されている記者の皆様にとっても大きな変化かと思います。AIが生成する二次情報ではなく、現場に根ざした一次情報や、記者ならではの視点に基づくジャーナリズムがより強く求められるようになるはずです。エルテスとしては、記者の方々が理解すべき内部不正の実態に関する情報を丁寧に提供し、結果として、より価値のある記事を制作していただけるよう支援していくことも重要だと考えています。

――IRI・エルテスがまだ発揮しきれていない最大の伸びしろはどこにあると思いますか?

奥天 メジャー志向を持つことが重要です。というのも、IRIの顧客は誰もが知る国内企業が多いですし、株式会社アイ・ティ・アールが提供する調査レポート「ITR Market View:エンドポイント・セキュリティ対策型/情報漏洩対策型SOCサービス市場2025」では、UEBA運用監視サービス市場においてトップシェア34.5%を獲得(※1)しており、メジャーなマーケットリーダーです。マーケットリーダーはマーケットを育てなければならないので、市場への提言や意識変革のための強い言葉も必要となります。エルテス自身、そしてマーケット全体の次の成長につなげるためには、そうした強い意志が必要になるのではないかと思っています。

――最後に、この記事を読んでいるステークホルダーへメッセージをお願いいたします。

奥天 内部不正は、多くの人が課題と認識している一方で、社員の行動分析やデータ保全といったセンシティブな問題を伴うため、対策を前面に打ち出しづらい分野でもありました。しかし現在、マネージドUEBAという振る舞い分析技術が、このパーセプションを根底から変化させる時期に来ています。
内部不正は組織の「闇」の部分とも言えますが、IRIは単に不正を暴くためのものではなく、社員一人ひとりが不正を起こさずに済む環境をつくるための施策として捉えられるべきだと考えており、そうした観点からも、内部不正対策への関心をより一層高めていきたいと思います。

エルテスが提供する価値をより多くの方に知っていただき、「不幸せ」を減らす取り組みに今後も注力していきますので、ぜひご期待ください。

= = =

※1 出典:ITR「ITR Market View:エンドポイント・セキュリティ対策型/情報漏洩対策型SOCサービス市場 2025」UEBA運用監視サービス市場:ベンダー別売上金額シェア(2024年度)

プロフィール

奥天 陽司(Yoji Okuten)
株式会社エルテス
事業管理本部 本部長
マーケティング部 部長

システムエンジニアを経てマイクロソフト日本法人のセキュリティ技術責任者を経験。同社及び株式会社ラックにおいてセキュリティに関するマーケティング活動をリードし、20年以上のBtoBマーケティングの経験を有する。2025年11月よりエルテスにマーケティング部長として参画。

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